中小企業で面接を分担すると、担当者によって質問が変わり、面接後に「この人にはその仕事について聞いていなかった」と気づくことがあります。職務内容をもとに、全員に聞く基本質問をAIで下書きし、採用担当と現場責任者で確認しておくと、必要なことを聞き漏らしにくくなります。
AIに任せる範囲は質問案の作成までです。応募者の情報は入力せず、回答の解釈や採否は社内の採用担当者が担います。厚生労働省は、職務に必要な適性・能力に基づいて、面接の質問項目や評価基準を事前に決め、仕事に関係しない事項を尋ねないよう案内しています。この手順でも、質問と実際の仕事を一つずつ結び付けます。
1.求人票から、面接で聞きたい仕事を一つ選ぶ
用意するのは、最新の求人票、仕事の手順が分かるメモ、会社が利用を認めた生成AIのチャットです。履歴書や応募者の氏名、過去の面接記録は、この作業には必要ありません。まずは求人票から一つの業務を選び、「どんな場面で、何を確認して、誰に伝える仕事か」を現場担当者に聞きます。
たとえば「事務職のコミュニケーション力」では、面接官によって受け取り方が変わります。「注文内容に不足があったとき、確認すべき点を整理して担当者に引き継げるか」まで具体化すると、質問の目的を共有できます。求人票の仕事と実際の担当業務に差があるときは、先に職務の範囲をそろえましょう。
2.基本質問と、回答から確認する行動を下書きする
次の指示文の末尾に、整理した職務メモを貼ります。確認点は、面接官が応募者の回答から聞き取る具体的な行動を指します。好印象かどうかといった感想とは分けて記録します。
以下の職務メモをもとに、同じ職種の応募者全員に聞く面接の基本質問案を最大3問作ってください。 「対象業務/基本質問/回答から確認する行動/共通の補足質問」の4列で出力してください。 実際にあり得る場面を一問につき一つだけ示し、未経験者も自分ならどうするか答えられる表現にしてください。 職務メモにない要件を足さず、家族・出身地・思想信条など、職務に関係しない事項を聞かないでください。 情報が足りなければ質問を作り足さず、現場担当に確認したいことを別に挙げてください。応募者の評価や採否の判定は行わないでください。 [職務メモ] ここに入力
架空の入力と期待する出力
入力例 受注事務。注文メールを受け取り、商品、数量、納品希望日を確認する。不足項目を整理し、営業担当へ引き継ぐ。納期は受注事務の担当者が確約しない。
出力例 基本質問「商品名と数量は分かりますが、納品希望日が書かれていない注文メールが届きました。最初に何を確認し、営業担当にどう伝えますか」。確認する行動は「不足項目を特定する」「分かっている条件と不足項目を区別して伝える」。共通の補足質問は「営業担当に引き継ぐメモには、どんな項目を書きますか」。
この出力は見本です。質問が業務内容に沿っているか、候補者に社内ルールの暗記を求める形になっていないかを現場担当者が確認します。回答の言い回しが見本と違っても、同じ行動を説明できていれば記録の対象にします。
3.使いにくい質問は、場面と確認点を絞って直す
質問が「あなたの強みは何ですか」で終わる。 指示に具体的な場面が足りない可能性があります。「注文メールに不足がある場面だけに絞り、最初にする行動を尋ねてください」と追加します。直した質問で、一つの仕事に対応する行動を聞けるか確認します。
勤務条件の確認に、家庭事情を聞く質問が混ざる。 勤務の条件と応募者の私生活を結び付けた出力です。その質問は外し、会社が提示する勤務条件の説明と確認に切り分けます。追加指示は「家族や生活事情を尋ねる質問を削除し、勤務条件の説明は職務の質問表と別にしてください」。修正後は補足質問まで読み、同じ内容が言い換えで残っていないかを確認します。適性・能力との関係を説明できない質問があれば、使用を保留し、採用責任者が厚生労働省の資料と照らし合わせます。
質問の確認と、面接後の振り返りまで測る
採用担当は質問と確認点を承認し、面接官に同じ版を配ります。面接後は「基本質問を予定どおり聞けたか」「確認した行動を記録できたか」を振り返ります。聞き漏らした項目は「未確認」として扱い、本人の能力が不足していると推測しないようにします。質問の意味が面接官ごとに違っていたら、次回までに職務メモか確認点を直します。
たとえば一職種の質問表を手作業で作るのに45分かかるとします。AI利用で職務の整理10分、下書き5分、採用担当と現場の確認・修正15分なら、合計30分で15分の短縮です。月4職種、1時間3,000円と仮定すると、月3,000円相当の作業時間です。これは試算で、追加ツール費や質問表を更新する時間は別に考えます。募集が少なく、確認済みの質問表をそのまま使える場合は、新しく作る費用対効果は小さくなります。
今日試すなら、一職種の基本質問を三つまで
現場責任者と採用担当が、応募者情報を使わず模擬面接を1回行います。質問ごとに「どの仕事を確認するか」「回答からどんな行動を記録するか」を2人で説明できれば、次の面接で試せます。説明がそろわない質問は、使う前に修正しましょう。
参考資料(2026年11月8日確認) 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
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